日本IVF学会 Japan Society of Assisted Reproduction

-顕微授精- About IVF

顕微授精

 顕微授精はもともと重症の男性不妊の方のために開発された治療法で、体外受精をより進歩させた方法です。
 一般の体外受精と同じように排卵誘発した後、経膣超音波で見ながら卵巣から卵子を採取します。体外受精では精子が自分で泳いで卵子の中に入るように精子と卵子を培養液のなかで一晩一緒にしておきますが、男性の精子が少なかったり、運動性が悪かったり、機能が悪かったりすると、精子は卵子の周りを覆う分厚い透明帯という膜を突破することができません。顕微授精では精子が透明帯を通って卵子の中に入るのを助けます。

 顕微授精のうち、最初に開発された方法はPZD(透明帯部分切除法)とよばれます。この方法では透明帯の一部に穴をあけておき、そこから卵子の中に精子が入ることができるようにしてやります。ただ、この穴から何匹もの精子が卵子の中に入ってしまう多精子受精が起こることが多く、正常な受精の頻度が少ないのが難点でした。次に開発されたのはSUZI(囲卵腔内精子注入法)という方法で、この方法では数匹の精子を細いガラスのピペットで透明帯の中に入れてやります。

 透明帯の中に入った精子は自分で卵子の細胞膜を破って卵子の中に入ります。この方法では一匹しか精子を入れなければ多精子受精が防げますが、受精の確率が低くなってしまいます。といって、何匹も精子を入れると受精の確率は高くなりますが、多精子受精の可能性も高くなってしまいます。これらの問題を解決するために開発されたのはICSI(卵細胞質内精子注入法)という方法です。ICSIでは精子を直接卵子の細胞質の中に注入します。一匹の精子で確実に受精しますから多精子受精の心配がなく、受精率も高くなります。

顕微授精

 現在では顕微授精というとICSIを指すことがほとんどです。世界で最初にICSIに成功したのはベルギーのVrije大学のPalermo博士らのグループで1992年のことです。現在ではICSIは男性の精子の数や運動性に問題がある場合だけでなく、原因不明の受精障害、男性側の抗精子抗体、普通の体外受精では妊娠されない場合、など様々な原因による不妊症に妊娠率の高い治療法として広く実施されています。
  また、ICSIでは精子が全く運動していなくても受精可能です。精液の中に精子がいない場合でも精巣上体や精巣そのものから精子を取ってきて卵子と受精させることもできます。精巣上体から精子を採取することをMESA、精巣から精子を採取することをTESEといいます。


 ICSIを行う際にはマイクロマニピュレーターという機械を使って顕微鏡で見ながら精子を直径5〜7ミクロンの細いガラスの針に吸い込みます。このガラスの針で卵子の周りの透明帯を通過させ、精子を卵子の細胞質の中に直接注入します。卵子一個に一匹の精子があれば受精できるので必要な精子はごく少数ですみ、きわめて重症の乏精子症でも妊娠が可能です。顕微授精の操作はきわめてデリケートで高い技術と高度な設備を要します。

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