
この講義では、本学会理事のドクターが自身の専門分野や生殖補助医療についての考えを
会員の皆様、そして不妊治療に携わるすべての方へ向けて発信して参ります。
毎回、講義を担当したドクターが次のドクターを指名するリレー方式で進めていきます。
不妊治療の最新情報、そしてドクターの熱い想いをお届けしますので
どうぞお楽しみになさってください。
初回となる今回は、本学会理事長の森本義晴先生の講義からスタートです。
■IVM
ヒト卵子の体外成熟の試みは体外受精胚移植法完成以前から行われていたが、近年になって卵子の体外成熟に関心が高まり、臨床応用がなされるようになった。卵子は卵原細胞から始まって多くの段階を経て成熟卵子に到達するが、臨床応用されているのはその最終段階のみであり、この技術がIn Vitro Maturation (IVM)と呼ばれ、現在、世界中に拡まりつつある。
ヒト卵子の体外成熟の試みは相当早い時期に始まった。最も古いものは1944年に報告があり、さらに、それより20年ほど経って、1995年にEdwardsが様々な研究を試み体外受精胚移植法の完成をみている。これは、即ち、生殖生物学を志す者にとっては夢であり、到達すべき目標であった。近年になって、体外受精胚移植法の周辺には多くの派生技術が開発され、妊娠または着床率も創蒙期には考えられなかったほど上昇している。そして、さらに次世代の新技術としてIVMが注目をあびるようになった。
IVMでは、主に多嚢胞性卵巣症候群(PCO)の患者からGV期の未熟卵子を採取し体外培養後顕微授精し、胚移植を行う。採卵針としてはIVM IVF OSAKA NEEDLE(北里サプライ)を用い、300mmHgで直径5から7mmの卵胞から採取する。この採卵針はヒト未熟卵子採取用に我々が特別に開発したもので内套と外套からなる。外套は、卵巣の把持のために使用し内套で小卵胞を穿刺する。
未熟卵子はTCM199をベースとして、FSH, hCG,20%患者血清を加えて使用する。気相はthree gasを用いる。最近では、IVM専用培養液として数種発売されている。培養は24時間が最適である。本法は、PCO患者のみならず正常月経周期を有する患者にも応用可能である。また、頻回に体外受精を行った難治性患者にも有効なことがあった。
卵巣、卵胞そして卵子の体外培養は、古くから行われてきた人類科学の夢である。すでに確立されたマウスでのFull Cultureに続いてヒトでもこの研究が進むと様々な応用が可能である。従来、指摘されたように放射線治療または化学療法を受けるがん患者の生殖細胞保存は凍結法がガラス化法などの進歩で可能となった現在、現実化している。凍結融解した組織を成熟卵子まで導くことが可能となれば卵巣または卵子バンクも利用範囲も拡大するだろう。
また、すでに我々が臨床応用したIVM の効率をさらに上げることができれば、現在の刺激による体外受精の時代は終わり、新しい非刺激周期体外受精に置き換わる可能性もある。今後のこの分野の活発な研究が期待される。
IVFなんばクリニック
理事長 森本 義晴
URL:http://www.ivfnamba.com/
(2009年11月16日(月))
■Back Number
*次回は、近畿大学生物理工学部教授の細井美彦先生の講義です。
英ウィメンズクリニック
水田真平・後藤 栄・橋本洋美・黒田泰史・松本 由紀子・水澤友利・緒方誠司・
山田 聡
苔口昭次・塩谷雅英
URL:http://www.hanabusaclinic.com/
【目的】
IVFおよびICSI施行翌日の受精判定時に前核を1個しか認めない胚(1PN胚)がある。1PN胚の発生機序について一致した見解は得られていない。IVF 1PN胚は48.7-61.9%が2倍体で、ICSI 1PN胚は9.5-27.9%が2倍体であったと報告されているが、移植の対象としない場合が多い。しかし、既報告の多くが分割期における染色体解析であるため、我々は胚盤胞に発生した1PN胚の染色体の倍数性を解析し、1PN胚が胚移植の対象となり得るか検討を行った。
【材料・方法】
IVF 1PN胚由来の胚盤胞は84.6%(33/39))が2倍体であった。2.6%(1/39)が半数体、7.7%(3/39)が半数体と2倍体のモザイク、5.1%(2/39)が無秩序なモザイクであった。2個はシグナル不良で判別できなかった。ICSI 1PN胚由来の胚盤胞は45.5%(5/11)が2倍体であった。9.1%(1/11)が半数体、27.3%(3/11)が半数体と2倍体のモザイク、18.2%(2/11)が無秩序なモザイクであった(表2)。2倍体はIVFで有意に高い割合であった(P<0.05)。
【結果】
検討1)卵丘細胞除去直後の紡錘体可視率は82.1%であった。不可視であった卵子の1時間後の再観察による紡錘体の出現率は49.7%であった。図1に示すとおり、正常受精率は可視卵と再観察での可視卵において有意に高い値であった(p<0.01)。
検討2)表1に示すとおり、追加培養の有無に関わらず紡錘体が可視であることでAの割合が高くなり、不可視である事でCの割合が高くなったことにより、ICSI直前の紡錘体の状態と不受精卵子の紡錘体の状態には相関が認められた。
【考察】
IVF 1PN胚由来の胚盤胞は2倍体の割合が高いため、移植対象となり得るかもしれないことが示唆されたが、ICSI 1PN胚由来の胚盤胞は2倍体が約半数のため、移植対象とするのは慎重になるべきである。胚盤胞発生率はIVF 1PN胚および ICSI 1PN胚ともに低いこと、および分割期胚の解析結果と比し2倍体胚の割合が高いことより、胚盤胞までの発生過程において、ある程度染色体異常胚が淘汰されていると考えられた。

■Back Number
・第12回大会 浅田レディースクリニック浅田生殖医療研究所
北坂浩也・
福永憲隆・永井利佳・吉村友邦・糸井史陽 他 「紡錘体が受精に及ぼす影響」
・第11回大会 医療法人社団愛賛会 東京ベイレディースクリニック
高山 修・齋藤 江莉・松永陽子・大塩達弥 「c-IVFにおけるヒト卵の非分割原因解析」